西の自然遺産「屋久島」の象徴が「縄文杉」ならば、
東の自然遺産「白神」の象徴は「マザーツリー」。
「マザーツリー」に逢うためには「白神ライン」という道を車で走らなくてはなりません。
白神ラインにある「津軽峠」から徒歩数分でマザーツリーに逢えるということで、僕は気軽に考えていました。
しかし白神ラインとは、いわゆる林道であり、未舗装・未整備で、極めて危険な道路でした。
砂利道のところどころに大きな穴が開いていたり、対向車とすれ違えないほど狭い道幅だったりと、常に緊張感を強いられる道です。
携帯電話の電波も届かないところも多いです。
実際、転落横転してしまった事故も発生しています。
それでもマザーツリーに逢いたい一心でなんとか車を走らせました。
そしてついに「津軽峠」まで辿り着きます。
なんと、ここまでバスが走っています、びっくり。
さて、いよいよマザーツリーに逢おうという時、熊注意の看板がありました。
ビビります。
それでも気をとりなおして、前へ進みます。
ふれあいの径を行きます。
行きます。
と、見えてきました。
ブナの巨木、母なる木、「マザーツリー」です。
女神か…
森の中でたたずみ、優しく微笑みかけるその姿は「母」、と言うより「女神」のようです。
ブナの平均寿命は200年ほどですが、白神山地にあるマザーツリーは、推定樹齢約400年だそうです。
胸高直径148cm、胸高幹回り465cm、樹高30mの巨木。
確かに、屋久島の縄文杉が威厳と安定感、安心感ある男性的な、父親的存在感だとしたら、
マザーツリーは慈愛と優しさに満ちた、女性的な母性を感じさせます。
すぐに団体客などが現れて、現世に引き戻されてしまいましたが、
一寸の間の、僕と彼女だけの世界は、至福と言っていいひとときでした。