太宰府天満宮『鬼すべ神事』

投稿日:

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2019年1月7日、夜更けの太宰府天満宮では、男衆と男衆の意地がぶつかり合っていました。
激しい炎の祭り、「鬼すべ神事」を目の当たりにした瞬間です。

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暖冬の昨今、1月初旬でありながら、飛梅も白い花が開き始めていました。

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あるじなくとも春を忘れぬ、健気な白梅。

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さて、太宰府天満宮では初春へと誘う、正月明けを知らせる神事が執り行われます。
それが「鬼すべ」です。

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夕刻の「鷽替え神事」を終えた19時過ぎ、「だざいふえん」そばにある「鬼すべ堂」へ足を向けました。

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会場の仕切り周りには、例によってカメラおっさん連中が陣取っています。
三脚はゆずるとしても、込み合う場所での脚立はほんとやめてほしい。
カメラおっさんの僕が思うくらいなので、一般の観覧者はもっと迷惑に感じていることでしょう。
脚立がなければ、あと一人二人分のスペースはできるはずです。
ぽんってカバン地面に置いて、あ、そことってるから、みたいなのもどうかと思いますよ。

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とりあえず最前列が取れたのですが、ここからが地獄でした。
鬼すべに参加する氏子団は、19時頃から天満宮周辺を練り歩きますが、ここ鬼すべ堂に集結するのは21時頃。
つまり、しんしんと冷える太宰府の夜の寒さに、2時間立ちぼうけで耐えなくてはならないのです。
暖冬の陽気に油断した僕は、防寒対策が完璧ではなかったのです。
足から底冷えする体に、指先は痺れて感覚が麻痺するほど。
やばい、さむい、
我慢も限界になりそうな時、威勢の良い声が聞こえてきました。

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そしてついに入場してきたのは、小さな鬼すべ団です。

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小・中学生で構成された、このグループは、鬼すべ神事を受け継ぐ未来の氏子さんたちです。

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伝統の奥深さを肌で感じるため、こうして前座的に参加し、会場の外で本祭を見学します。

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小さな鬼っ子たちが、とても愛らしいですね。

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そして更に威勢の良い掛け声とともに入場してきたのが、青年氏子による一団です。

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ごつい棍棒を手に御堂を練り歩くのは、

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鬼を守る「鬼警固」の一団です。

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次に入場してきたのは、

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赤い法被の「燻手」(すべて)の一団。

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イキの良さそうなのがいます(笑)
「燻手」とは、鬼をいぶり出す、鬼払い役。

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大きなプラカードのようなものは、うちわになります。

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他にも御堂前に藁束を築く礎にする丸太などを運んでいます。

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鬼すべ神事とは、氏子約300名が、「鬼係」「鬼警護」「燻手」の三役に分かれ、鬼退治の場面を演じる神事です。
鬼係は鬼の親衛隊で、その身で鬼を隠し守ります。
鬼警固はさらに、鬼係らを守る役。

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「すべる」とは太宰府の方言で「いぶす」という意味だそうです。

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つまり「鬼すべ神事」は鬼すべ堂に籠る鬼を、燻手が聖なる炎の煙で燻し祓うという、鬼軍団と人類の救世主燻手の、炎と炎による攻防戦の神事となります。

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と、今度は大きな松明が持ち込まれてきました。

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この松明は会場の脇に置かれます。
結界のような意味合いでしょうか。

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今度は燻手の人たちが、鬼すべ堂の前に藁を積み始めました。

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「高く積め、高く積まんかぁ!」と責任者らしき人の発破をかける声が響きます。
うず高く積まれた松葉や藁は、人の背丈ほど。

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消防団の方も、消防車とともにスタンバイします。
なぜなら、この鬼すべ神事は、日本三大火祭の1つに数えることもある、勇壮な火祭りだからです。
実際に昨年の神事では、鬼すべ堂に引火しかけて、消防の水で消し止めたということです。

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すると、燻手の一団に、緊張がみなぎり始めました。

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妖気が漂う入り口、そこに

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勇ましい一軍が地響きとともに登場します。

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「鬼係」の一団です。

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その手には、燃え盛る大きな松明が抱えられています。

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そして一気に走り出したかと思えば、

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激 ☆ 突 !

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一旦引いて~

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再 ☆ 突 !!

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松明は次々持ち込まれ、その数3本。

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その都度、燻手の一団に突っ込んでいきます。
なんと言う激しさ!!!

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あ、熱くはないのか、、

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いや、熱いようです。

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相当アツいようです!!!!!
アツって言う叫び声が時折聞こえます。

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かなりのマジぶつかり合い。
野次・罵声も飛び交います。
ひとしきり応酬を終えると、

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鬼係は誇るかのように松明を立て始めました。

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煌々と燃える鬼火、これは鬼軍優勢!
人類存亡の危機です!!!

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そう思えた瞬間、

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鬼すべ堂の扉が開き、

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神主によるお祓いが始まりました。
人類反撃の狼煙です。

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会場の照明が全て消され、

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御本殿で起こされ、お祓いされた御神火が藁束に火をつけます。

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小さな火は瞬く間に炎となり、

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炎上、

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炎上、

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大炎上!!!

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一瞬にして御堂の高さを超える炎と煙が、夜空を焦がします。

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荒れ狂う炎は、まるで火竜のよう。

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この立ち上がる炎に向けて、燻手が巨大なうちわを振り下ろします。

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これは燻手が聖なる忌火と煙で、鬼すべ堂の中に籠る鬼を追い出そうとしているのです。

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「扇げ!扇げ!」
ここでも怒鳴るような発破がかかります。
火の勢いが落ちてくると、下に敷いた丸太を持ち上げ、空気を入れ込んでいきます。

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鬼すべ神事は寛和2年(986年)、菅原道真公のひ孫にあたる「菅原輔正」(すがわらすけまさ)が始めたとされています。
現在は福岡県の指定無形民族文化財となっており、新年の災難除去・開運招福を祈願して行われています。

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扇ぐうちわが地を叩き、その本体にも火が燃え移ります。
そのうちわの音と別に、激しく、バンバンッと打ちたたく音が聞こえています。

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それは、鬼警固が鬼を守るため、鬼すべ堂の板壁を棍棒で打ち破り、堂内の煙を外に出そうとしている音でした。

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ついに、ほとんどの板壁が打ち壊されます。

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すると燃え盛る松明とともに、

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荒縄で48ヵ所を縛られた鬼が、鬼係に囲まれて堂内へ入っていきます。

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鬼たちは堂内をを七回半、

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堂外を三回半まわります。

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この時、堂内では神職が、堂外では氏子会長が、鬼に向かって煎り豆を投げ、卯杖(うづえ)で打ち、鬼を退治しようとするのだそうですが、

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堂外に出た鬼らは、最後の反撃に出ます。

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荒れ狂う鬼軍団。

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やがて打ち払われ、

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鬼も退散の一途をたどります。

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退散した先に、再び松明が掲げられ、

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鬼はついに敗北、人類の平和は守られ、太宰府の火の祭典「鬼すべ神事」は幕を閉じるのです。

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息をつかせぬ、想像以上に激しい祭りでした。

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ちなみに燃え残った鬼すべ堂の板壁は「火を避けて燃え残った」ということで、「火除けのお守り」としての信仰があり、持ち帰って玄関先にお祀りする風習があるとのこと。
また氏子団が頭につけていた、藁で編んだ「鬼の角」と合わせて、祭り後に観覧者たちがごぞって求めます。
僕も運良く、気のいい若衆から譲っていただけました。

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こうして1月7日、夕刻の「鷽替え」そして夜半に続く「鬼すべ神事」の全てが終わると、太宰府の里は正月が明け、やがて東風吹く春の足音を聴くのです。

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後日談。
祭りの後の鬼すべ堂を訪ねてみました。

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藁を燃やした焦げ跡も、まだ生々しい。

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風通しの良い、簡素な御堂です。

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祭りの残滓が残る中、

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鬼すべ堂の中心には、表に背を向けるように、小さな祠があります。
祭り以外では、ほとんど人も訪れることのない様子に、少し寂しさを覚えました。

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2件のコメント 追加

  1. wakasahs15th より:

    「鬼すべ神事」300人も参加する凄い神事なんですね。鬼を退治する神事なのに鬼を守る親衛隊がいるのも面白いです。カメラマンの脚立が許せるのは最後列のみですね。もし、そうでない人がいたら皆で文句を言うことにしています(^_-)-☆マナーは絶対必要ですよね(^◇^)

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      鷽替えの方をメインに出かけて、鬼すべはついでくらいのつもりでしたが、想像以上にエキサイティングでした。
      写真ブームは歓迎ですが、皆が楽しめるよう周りへの配慮を、僕も心がけたいと改めて思いました。
      小さい子供もたくさん見にきていましたが、カメラマンらがあたかも自分の領域だとばかりに陣取っているのは、ちょっと不快に感じてしまいました。。

      いいね: 1人

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