「女ではない、立花だ!」
夫・立花宗茂が豊臣秀吉の命により朝鮮へ出陣すると、留守となった柳川城を守ったのが誾千代(ぎんちよ)でした。
誾千代は立花家の女性たちを武装させ、「女子組」を統率します。
見目麗しいと評判の誾千代を、夫のいぬ間に名護屋城へと呼び出した秀吉は、薙刀片手に颯爽登場した彼女にタマヒュンしたとかしないとか。
そんな妄想膨らむ色々な誾千代ちゃんがいらっしゃいますが、
僕はやはり、ワカマツカオリさんの誾千代姫が…しゅき。
ギャルメイクなのに凛々しさが伝わる、良い絵です。
さて、立花山登頂の余韻もそこそこに、我もいざゆかん、
三日月山へ。
三日月山は立花山と対をなす、標高272mの山。
尾根伝いに片道30分の行程となります。
しかしながら、立花山山頂からは急な下りとなり、油断すると転げ落ちそうです。
不安定な足場から見上げると、立花山城の石垣が見えました。
ぐいぐい下っていきます。
するとすごい形の木がありました。これも楠ですよね。
ヤマタノオロチみたい。
根元に小さく鳥居が置かれた木もあります。
凸と
凹で、
上ではこんな感じで絡み合う二人。
「奥さん、いいじゃないか」
「だめよ、夫が帰ってくるわ」
『日本書紀』の第一 神代上 第八段 一書第五では一書に曰くとして、スサノオは次のように言います。
杉と楠は船に使いなさい、檜は宮殿に使いなさい。そして槙は棺桶に使いなさい、と。
この話は実は、各樹木の特性をよく捉えているのだそうです。
現代日本の山は、約4割の面積を人工林が占めています。
そのうち杉が44%、檜が25%で、この2つの樹種だけで人工林の7割を占めることになります。
それは戦後の造林が緑化と復興需要へ対応するため、成長が早く建築に向いた樹種が選ばれたことにあるそうです。
杉は日本の固有種で学名をクリプトメリアヤポニカ(Cryptomeria japonica)、「隠された日本の財産」という意味の名前が付けられています。
杉には調温・調湿作用をはじめ、二酸化窒素濃度やホルムアルデヒド、オゾンや二酸化窒素などを吸着する機能があり、知ってか知らずか、正倉院の唐櫃(からびつ)は杉製で長年宝物を腐食から守ってきた歴史もあります。
杉は大きく分けると、太平洋側の表スギと日本海側の裏スギに分かれます。古くから多くの品種があり、「杉は人なり」と言われるほど個性と多様性に富んでいるのです。
檜は古来より尊い木とされ、法隆寺や正倉院などの建物にも使われてきました。
檜には抗菌作用を持つヒノキチオール、αカジノールなどが含まれ、また別のヒノキオールはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)にも殺菌作用を示すことが確認されています。
さらに檜にはダニやシロアリを防ぐ効果もあり、その香りには人をリラックスさせる効果もあって、まさに宮殿に使用するのにふさわしい木材であるといえます。
檜は伐採後200年間もの間、強度を増していき、伐採時の120%ほどまで強度は上がり続けます。
その後は非常に緩やかに強度を落としていきますが、その低下具合は1000年で20%ほどであり、1200年の時を経ても伐採時の強度と同程度に戻るだけという脅威の木材でもあります。
歴史的建造物に檜が多く使われている理由は、そこにあるのかもしれません。
槙は耐久性が高く土葬する棺桶に適していたと思われ、実際に弥生時代や古墳時代に木棺として用いられました。
急坂を降り切って、なだらかな道に差し掛かった頃、
ぶわりと背筋が泡立つ、そんな感覚がありました。
磐座祭祀の跡です。
この磐座の情報は全く見つかりませんが、古代祭祀跡であるのは間違いないでしょう。
岩を抱くように大樹が根を張っています。
つまり相当古い時代から、これらの岩はここにあったことを示しています。
しかもここの岩には不思議な亀裂が刻まれています。
これはいったい何なのか。柱状節理ともまた違うようですが、これも溶岩が関係しているのでしょうか。
一方向に裂けているだけでなく、このように十字に割れている岩の存在は、今の所僕には他に思い浮かびません。
屋久島の「益救神社」(やくじんじゃ)や対馬・和多都美神社の「磯良恵比須の磐座」とも違っています。
立花山と三日月山の中心あたりに位置するこの磐座は、現代の僕らに何を伝えようとしているのでしょうか、謎が深まります。
驚きの磐座を名残惜しみつつ、意を決して先に進みます。
ここからは上り道、
足を絡めとる木の根を気遣いながら、ゆっくり登っていきます。
narisawaさんは、楠をシンボルツリーとする古代氏族は、越智家のほかに紀伊の「名草家」であると言います。
多くの神社が杉を御神木とする中で、これは特異なのかもしれません。
ちなみに出雲は檜ではないかという話です。
出雲に檜を御神木とする神社があったか、記憶が定かではありませんが、思い浮かぶのは出雲熊野大社の「鑚火殿」(さんかでん)に保存されている聖具、「燧臼」(ひきりうす)です。
燧臼は約100cm×12cm×3cmの檜の板で、長さ80cm×直径2cmの卯木の棒「燧杵」(ひきりきね)とともに神聖な火を起こすための発火の神器として扱われます。
これは熊野山(天宮山)の御神霊が本殿に遷されたことを示すために熊野山の木で作られ、火切神事が行われたことに由来します。
僕はこれまで御神木を、でっかい木だな~としか見ていませんでしたが、その樹種が古代氏族の勢力に関係しているという見識にあたらめて感銘を受けました。
確かにそうです。しかもその樹木が自生しているのではなく植樹されているのだとしたら、わざわざそこにその樹木を植えて祀ったということになります。
楠は主に関東地方南部以西から本州の太平洋側、四国、九州・沖縄に広く見られ、特に九州に多く、生息域は内陸部にまで広がっています。
しかし人の手の入らない森林では見かけることが少なく、人里近くに多いことから、そのほとんどは自生ではなく植樹されたものと推定されます。
和名クスノキの由来は諸説ありますが、香りが高く寿命が長い「奇(くす)しい木」という意味で名付けられたという説や、南方語由来とする説などが有力です。
ちなみに中国では「楠」という字はタブノキを指し、クスノキには「樟」の字を使います。
日本ではどちらもクスノキとして使用され、神社などでは楠の字が多用されているようなので、『偲フ花』でも楠を使用しました。
いよいよ山頂が見えてきました。
と、ここにも磐座が鎮座しています。
この磐座にも深い亀裂があり、
そこには白い石が敷き詰められていました。
何か信仰が受け継がれているのでしょうか。
三日月山山頂です。
こちらの眺望も素晴らしい。
背後には立花山。
立花山は805年(延暦24年)に最澄が、唐で天台宗を学んで帰国し立花山山中で独鈷寺の建築にとりかかる際、唐から持ち帰ったシキミの杖を岩に立てかけていたところ先端から根が生え、上の方からは枝葉が茂り、花も咲いたと云います。このことがあってから、山も村も「立花」と呼ばれるようになったと伝えられています。
また三日月山は言い伝えによると、何時の頃か山頂から見る月が3つになって見えることがあったので 三日月山と云うようになった、とあります。
まあそのようなファンタジーがあったわけではないでしょうから、さらに古い時代からこれらの名に関わる事象があったことが窺えます。
三日月山の別名を「陣山」と言い、天智天皇の時代(660年代)に大陸等からの侵攻を防ぐために防人を置いた陣屋がここにあって、大宰府政庁への烽火の中継地となっていたと云います。
志賀島はもちろん、
脊振山系や
宝満山もよく見えます。
宝満山は豊玉姫の妹、玉依姫を祭神とする修験の山です。
とても形の良い豊満なOPPA、女神の山です。
豊族はここで、月神の祭祀を行ったのではないでしょうか。
三日月山はまことに麗しい、神秘の山でした。
空気が澄んでいるんですね。見晴らしが良い!!
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はい、この日はとても天気が良く、素晴らしい眺望でした。
ただ昔はもっと遠くまで見渡せていたので、黄砂やPM2.5などによる空気汚染はあるのでしょう。
完全に空気が清浄であった太古の景色などは、どれほど遠くまで見渡せたのか、とても興味をそそられます。
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旧年中はお世話に・・・謹賀新年・・・鬼は内、福も内・・・ハッピーバレンタイン・・・灯りを付けましょ・・・お久しぶりです。8まんです。いや・・・なんかもう、最後のコメント書いて以降、会社のブラックレベルが跳ね上がって6勤1休で残業だらけでボロボロ状態がつい最近まで。
正月休みは、ほぼほぼ寝正月。年が明けてもそれが続いて、めっさ心が荒んでしまってたんで、しばらく離れておりました。CHIRICOさんは正月早々の災難以外は息災でしたか?
遅くはなりましたが、本年も宜しくです。
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おお8まんさん、明けましておめでとうございます。
ご多忙なのであろうと思っておりましたが、実は少々心配しておりました。息災でなによりです。
僕も今年来年あたりは、心身ともにすり減らす日々になりそうですが、『偲フ花』はどちらかといえば息抜き・安らぎの時間でもありますのでぼちぼち更新しています。
この先は今までのように旅できないかもしれませんが、ひと段落したところで8まんさんとはお会いしてゆっくりお話ししたいですね♪
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CHIRICO様 おはようございます。いつもありがとうございます。
珍しい樹相ですね。若い頃、山登り大好きだった私ですが、こんな木々は見た記憶がありません。神秘的な感じがして良いですね。
ところで、最近テレビの時代劇を見ていて〇〇藩〇〇家などと聞くや、奥の院のどこそこに墓所があるとつい口走ってしまうのです。
伴侶に大丈夫?と心配されています。ちなみに立花宗茂墓所はご存じだとは思いますが、一の橋を渡ってすぐの左にあります。(^_^;)
asamoyosi
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asamoyosi様、おはようございます。
立花山は不思議な山で、さほど大きな山やではないのですが、濃密な空気を感じます。
立花宗茂の墓所も奥の院にありましたか、さすが弘法大師のご仁徳。改めてその凄さに感銘します。
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美しい樹木が多いですね。誾千代姫も美しい(可愛いギャルでんな)。
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楠って改めて見ると綺麗な木ですよね。誾千代ちゃんはギャルだけど。
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