ガンガラーの谷

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そのむかし、琉球の島に、大きな穴がありました。
その穴は深く、どこまでも底知れず続いているのでした。
ある時、ひとりのおばあさんが、その穴に小石を落とします。
すると、
「ガンッ」
「ガンッ」
「ガンッガラー」
「ガラガラーー」
と、長く長く、その穴中に音を響かせ、落ちていったということです。

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沖縄県南城市前川、那覇空港から車で約30分ほどの場所に、「ガンガラーの谷」があります。
そこはとてつもない、パワースポットでした。

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ガンガラーの谷は、観光施設「おきなわワールド」に併設されていて、時間があればゆっくり半日は過ごすことができます。
広い駐車場に車を駐めて歩いて行くと、太い幹のガジュマルに出会います。
スタッフも写真を撮っていましたが、この先、比べ物にならない森の長老に出会うことになりました。

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さてしばらく歩いて行くと、

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まるでインディジョーンズの映画セットか、と思うような場所に行き着きます。

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このぽっかり空いた洞窟(鍾乳洞)は「サキタリ洞」と呼ばれます。

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その洞窟内がそのまま「ケイブカフェ」というカフェスペースになっており、非日常的な癒し空間が広がっています。

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天然の洞窟を利用したケイブカフェ内は、湿度が高く、夏でもひんやりしています。

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ライトアップされた天井からは、時折水滴が落ちてきますが、それを避ける傘が、カフェのエキゾチックさを盛り上げます。

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ケイブカフェでは夜間コンサートや結婚パーティなども行われることもあり、また貸し切ることも可能だということです。

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風化したサンゴで焙煎した「35(珊瑚)コーヒー」や冷たいドリンクで、沖縄の暑さをしばし忘れます。
僕はハイビスカスのドリンクをいただきました。

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ガンガラーの谷へ来たなら、カフェで一息つくのも良いですが、せっかくなので「ガンガラーの谷ツアー」に参加するべきです。
ツアーはあらかじめ、カフェに予約しておく必要があります。
原則前日までの予約が必要のようですが、ネットで手続きが可能です。

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ガンガラーの谷は、巨大な鍾乳洞が崩壊してできた谷であり、手付かずの大自然が広がる大変貴重な場所です。
広さは約14,500坪、歩行距離はおよそ1km、1時間20分ほどのトレッキングになります。
2008年8月に観光地として公開されましたが、その後、世界最古の遺跡などが発掘され、現在も発掘作業が行われています。

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古い島民の聖地としての一面もあり、勝手に足を踏み入れられる場所ではありません。
ガンガラーの谷に入るには、谷を知り尽くした専門のガイドさんに案内してもらう必要があります。

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鍾乳洞の石筍は気が遠くなる年月を経て成長していきますので、勝手に削ったりしてはならないものですが、出発口にあるこの石筍は当時の発掘者が切ってしまったのだそうです。
しかしその先に小さな石筍が成長し始めているのを見ることができました。

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この先は貴重な大自然が広がる太古の聖地。
途中トイレはないのですが、僕の経験上、このような強烈なパワースポットでは思いがけず催してしまうことも少なくありません。
実際、この時もスタッフの一人が道半ばで脂汗流す事態に陥りました。
必ずトイレを済ませて万全を期して臨みましょう。
では、いよいよ冒険のスタートです。
 
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ガイドさんは説明をしながら、ゆっくり歩いてリードしてくれます。
歩き始めてすぐに巨大に成長した台湾竹が目につきます。

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更に進むと、種類も形も多種多様な、豊かな亜熱帯の森に入っていきます。
足元は整備されているものの、歩きやすいスニーカーやトレッキングシューズが推奨されます。

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森の中は湿度が高く、夏の暑さは過酷です。

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天然の森であるため、当然虫も多く、相応の覚悟をもって向かいましょう。

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奥を見上げると、崖が見えていました。
そこに見える下に向かって尖った岩。
この露出した鍾乳石が残っていたことから、かつてこの谷は鍾乳洞の内部であり、崩落して現在の谷になったことが分かったとそうです。

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道の途中まで沿うように、森の中心を川が流れています。
ガンガラーの谷は1972年の沖縄返還直前に公開されましたが、公開の数年後、この川の上流から畜舎排水が流れ込むという汚染問題のため、公開が中止されてしまいました。
36年後の2008年8月、河川環境の回復を機に現在のガイド付ツアーとして再び公開され、この川も無事清らかなものとなりました。

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さて、しばらく進むと「母神」と書かれた洞窟があります。
命の誕生を祈る「種之子御嶽」(サニヌシーウタキ)のひとつ「イナグ洞」です。

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「イナグ」とは「女性」を意味する琉球の言葉です。
この洞窟内にツアー参加者が入ることはできませんが、その奥には驚く造形の鍾乳石があると云います。

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ガイドさんが見せてくれた写真がこれ。
いや、出来過ぎだろって突っ込みたくなりますが、本当のようです。
これを往古の人が見つけたら、それはここが母神の住まう洞窟であると思うことでしょう。
ちなみに先の「母神」と書かれた看板、これは地元のおばあさんが勝手に設置していったものだということです。
ここがはるか琉球時代から信仰されていた「御願所」(ウガンジュ)であり、大切な聖地であるのだと暗に伝えたかったのでしょう。

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更に川に沿ってもう一つの洞窟に向かいます。

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そこに見えて来たのが「イキガ洞」。

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「イキガ」とは男性を意味する言葉。
察しの良いあなたは、もうお分かりですね。

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ここも聖なる「御願所」(ウガンジュ)です。

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いくつもそれらしき石筍が連なる奥に、その王が鎮座します。

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ランタンの光に赤く照らされたその姿。

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子孫繁栄を願う往古の人々にとって、至極真面目に、大切な御神体です。

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古代出雲でもそうでしたが、幼子の生存率が絶望的に低かった往古において、その願いは切なるものでした。
今は観光化されたガンガラーの谷ですが、古くから住まう現地人にとって、当地は今も、命の誕生や子孫繁栄、子の健やかな成長の祈りが込められた聖なる場所なのです。

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またしばらく歩いて行くと、岩でできたトンネルに出会いました。
このトンネル、よくみて見ると、

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上から転がって来た岩が、その下の小さな岩に支えられて、かろうじて踏みとどまっているトンネルでした。
はるか遠い先には、また崩れてしまうかも知れないということです。

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谷を覆う岩壁が迫ってきました。

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コンクリートでできたトンネルの手前で振り返ると、

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ここがかつて、巨大な鍾乳洞であったことを窺うことができます。
この辺りに、「ガンガラー」の名の由来となった、大きな穴があったと言われています。

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木の枝の上には、僕らを見下ろす森の妖精「キムジナー」のような植物が。
彼らは「オオタニワタリ」という植物で、葉から水分などを吸収できるため、岩や無機物の上にも根を張ることができます。
また、その新芽は食べることもできるのだとか。

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そしてコンクリートのトンネルを抜けると、

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このツアーの目玉、ガンガラーの主の登場です。

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森の賢者、谷の主「大主(ウフシュ)ガジュマル」です。

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その存在、圧倒的です。
何百年と生き、長い髭を垂らす森の長老は、まさに谷の大賢者の風格。

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今尚生きているその大樹は、静かに穏やかに、僕らを見下ろしていました。

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大賢者の足元を抜けると、石積みの谷があります。

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かつてここは風葬の場所だったそうで、祈りが捧げられていた名残だと云います。
石の部屋は300年ほど前のお墓があり、以前は遺骨の残る内部を見学できたそうですが、今は中身を別の場所に移し、丁重に葬られたそうです。

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ガンガラーの谷はかつては海の底であり、遡ること数十万年前までは鍾乳洞でした。
今はその鍾乳洞が崩れて谷になり、豊かで神聖な、祈りの森になっていました。

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さて、興奮のツアーもいよいよ終盤です。
ガイドさんからはスタッフお手製の「ツリーテラス」へ案内されました。

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そこはなんと地上から20mはあるだろうと思われる巨木の上に作られています。

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なぜここに、労してこのツリーテラスを作ったかというと、そこから遠くに見える景色の中に理由がありました。
海岸付近にある港川採石場。
そこから1970年頃、日本人の始祖と云われる1万8000年前の人骨「港川人」(みなとがわじん)が発掘されました。
当時はその場所からガンガラーまでは川で繋がっていたようで、歩き、または川を遡って当地を往来していたと考えられています。

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その根拠となるものが、ツアー最後の洞窟内で発見されました。

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この洞窟は「武芸洞」と呼ばれ、古代人の住居跡ではないかと考えられている場所です。

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入り口側にあるこの発掘現場からは石棺が見つかりました。
縁取られた石が石棺の跡です。

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わずか20cmほど掘られた穴からは、石棺に納られた約3000年前の人骨が、ほぼ原型を留めて残っていたと云います。
端に積まれた石積みは、石棺の蓋だったものです。

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石棺の手前を見て見ると、浅く掘られた3段の地層が見えます。
現在の地表との深さ、約20cmあるかどうかというところです。
つまり当地が鍾乳洞だったため土が深く堆積しなかったこと、更に石棺に使われた珊瑚の石灰岩は強いアルカリ性のため、人骨が非常に良好な状態で保たれたのだといわれています。

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洞窟内の奥は人が暮らす上で過ごしやすい平らな地面になっており、両方の入り口が大きく開いているので通気性も良いため、「港川人」以降の人類が当地に暮らしていた可能性は濃厚です。

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更には約7000年前の土器やアクセサリー類も見つかっており、今尚発掘が進められているガンガラーの谷。
不思議な造形の鍾乳石、谷を見守る聖なる巨木、先祖の墓と古代人の生活の跡。
この神聖で大いなる遺産は、琉球の血を受け継ぐ方々はもとより私たちも、大切に見守り続ける必要があるのだと感銘を受けました。

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5件のコメント 追加

  1. asesorlegal 999 より:

    偲フ花様
    私は沖縄へは、それこそ二桁は訪れておりますが、いつも仕事での事でこうした名所へは行けずじまいでした。
    次回行く時には、苦労させてばかりの我が妻と共に行くたく思います。
    ありがとうございました。

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      良いところもたくさんありますので、ぜひ行かれてみてください!

      いいね

  2. shinobu0216 より:

    沖縄ステキですね❣
    お写真を拝見していたら行きたくなりました(^^)

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      こんにちは、SHINOBU0216様。
      ありがとうございます。
      はい、とても素敵なところでした。
      那覇市内からのアクセスも良く、気軽に秘境を堪能できました。
      最近注目を浴び始めたせいか、ツアー申し込みの人数が増えてきているようです。
      ゆっくり写真を撮るのは、タイミング次第かも。

      沖縄に行かれたら、ぜひお立ち寄りください!

      いいね

      1. shinobu0216 より:

        ハイ❢(^^)
        ありがとうございます❣
        是非、行きたいです🤗

        いいね

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