オソロシドコロ(八丁郭)

投稿日:

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対馬と壱岐はかつては一つの島だったそうです。
大陸移動でそれぞれ別の島になったわけですが、高山がなく平地の多い壱岐は古の時から集落もでき、対外的に開けた島となりました。
それに対し対馬は断崖絶壁が島を取り囲み、岸からなんとか上陸しても、すぐに険しい山が迫るという地形です。
外部から干渉を受けにくい島は、ツシマヤマネコを始めとする固有種が繁殖するように、文化も独特の発展を遂げたようです。

「オソロシドコロ」と言う場所も、そのひとつ。
それは天道信仰という対馬に根付く、一つの信仰の絶対不可侵の聖地です。
名の由来は、そのまま「おそろしいところ」ということだそうです。
以下、閲覧にはご注意ください。

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【天神多久頭魂神社】
「オソロシドコロ」とは対馬の天道信仰の禁足地の総称のようです。
主に「八丁郭」「裏八丁郭」「多久頭魂神社の不入坪」を言います。

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対馬北部に「天神多久頭魂神社」(てんじんたくずだまじんじゃ)があります。

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上対馬の天道信仰の中心地です。

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天神多久頭魂神社には二つの石積みの石塔がありますが、このような石塔が天道信仰には特徴的に見られます。

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拝殿や本殿はなく、自然信仰の原型のような聖地です。

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狛犬のような石も、天然石みたいです。

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この自然崇拝の形は、和歌山の古代熊野信仰に似ていると思いました。

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【天道大神神社】(天道大師祠)
対馬の南端にある龍良山(たてらさん)、この山全体が天道信仰の聖地です。
この山は「天道法師」(てんどうほうし)の禁忌として、立入や樹木の伐採が禁じられていました。
今の龍良山は登山も可能になっていますが、未だ斧を入れることは許されていないため、極めて自然度の高い照葉樹林が残されており、大正時代に「龍良山原始林」として国の天然記念物に指定されています。

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そのため山は原始のままの姿を今に残し、原始林としては国内最大ということです。

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川を渡って、少し龍良山に入ってみます。

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なぜならここに天道法師の母親の墓とされる「裏八丁郭」(うらはっちょうかく)があるというからです。

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森に入って15分くらい歩いたでしょうか、

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忽然と鳥居が現れました。

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なんだか周りの木がすごい状態になっています。

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こちらは念力でねじったようになってます。

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673年、対馬南部の豆酘郡内院村(つつぐんないいんむら)に超能力者が生まれます。
それが「天道法師」。
母は虚船(うつろぶね)に乗って漂着した高貴な身分の女性であり、ある時、陰部に太陽が当たって子供が生まれました。
その子を太陽の子、天道と名づけます。

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「陰部に太陽が当たって子供が生まれる」という話は、丹後の渡来系の神「アメノヒボコ」にも似た伝承があります。
これは「日光感性神話」と言われ、北アジア方面に多く伝わるものです。
とするなら、天道法師は渡来系の人物である可能性もあります。

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一人でここまで入ってきましたが、とてつもなくやばい気がします。
とにかく気をゆるめることができません。
敬虔な気持ちで、ただそこにいることが精一杯です。

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僕はここが「裏八丁郭」だと思っていました。
しかし裏八丁郭はこのあと行く原始林の中にあったそうです。
あったそう、というのは、結局この時僕はたどり着けなかったからです。

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ここは「天道大神神社」という所だそうです。

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情報が極端に少なく、不明ですが、天道法師が生まれ暮らした場所なのかもしれないと思いました。

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そして来た道を少し戻り、登山口と書かれた場所から少し原始林の中を登ってみました。

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そこは不思議な空間です。

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気の遠くなる昔から、変わらぬ大気が包んでいるのでしょう。

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あまり深入りしてはいけないような気がして、程なく山を降りましたが、

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あと少し進んだところに「裏八丁郭」はあったようです。

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結局、裏八丁郭参拝を成し遂げられたのは、この2年後となりました。

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【八丁郭】
そして天道信仰最大の聖地が、「八丁郭」(はっちょうかく)です。

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ここへは、本当に、奇跡的にたどり着くことができました。

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川を渡るのですが、すでに幽玄な空気が漂っています。

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天道法師は超能力を持っていて、様々な人の悩みや苦しみを救ったそうです。

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ある時、天道法師は嵐をまとって空を飛び、上京して元正天皇の病を治し、「宝野上人」の菩薩号を賜りました。

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知らなければ辿り着けない、そんな山道を歩いて鳥居を見つけます。

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不自然なくらい、森に立たずむ鳥居。

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傍に石塔があります。

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そこからまた森に入ります。

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さらに暗し。

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心が折れそうになるころ、

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ありました。

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かつては禁足地だったここは、天道法師のお墓ということです。

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天道法師はある時、「死してこの国を守ろう」とおっしゃり、数日間の祈祷の後、この下に即身仏として入られたそうです。

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鳥居が倒れていました。
言い伝えでは八丁郭にお参りの後は決して尻を向けてはならず、この鳥居まで後ずさりして戻らなくてはならないそうです。
また、鳥居を抜ける時は、頭に靴を乗せて「いんのこ、いんのこ(犬の子)」と唱えて抜けなければならないとも云われています。

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帰り道に、土ごとえぐれた大木が気になりました。

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【多久頭魂神社】
豆酘(つつ)にある「多久頭魂神社」(たくずだまじんじゃ)が最後のオソロシドコロ聖地となります。

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鬱蒼と茂る杜の中にある多久頭魂神社は、これまでのオソロシドコロと違って、心地よい空気に満たされています。

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立派な鐘楼もあり、神仏習合の地であることを窺わせます。

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天道信仰は、天道法師という超能力者の物語に、太陽信仰、山岳崇拝、自然崇拝など、太古のさまざまな要素が混ざり合って成り立っているようです。

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伝承では7世紀が起源とされているが、平安時代から中世にかけて神仏習合により形成された対馬固有の修験道の一種で、
その祭祀形式や行事には古神道の要素が多く伝承されているということです。

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この多久頭魂神社は八丁郭を含む龍良山の遥拝所であり、ここで祭祀が行われていました。

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拝殿の反対側にある杜、

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これが今も続く禁足地「不入坪」(いらぬつぼ)です。

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この奥には決して入ってはいけないのです。

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境内には様々な境内社があります。
神功皇后の行宮地「神住居神社」もここにあります。

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本殿の裏には素晴らしい楠があります。

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写真では伝わりにくいですが、とにかくでかいです。

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圧倒的存在感。

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別の木も

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根が地を這うように伸びてます。

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多久頭魂神社のそばには古代米の赤米を育てる神田がありました。

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太陽のことを「おてんとさま」と呼びますが、
その「おてんとさま」は「お天道様」の事です。

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オソロシドコロとは、古代から続く祈りの聖地であり、現世の軽い気持ちで決して穢してはならない禁足地をあらわしているようです。

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4件のコメント 追加

  1. 森守 より:

    はじめまして、
    ある霊能者の方から「あなたは離島にいた事が有ります。オソロシドコロと言うところです」と言われました。友人にあったよオソロシドコロってところ、そしてこのサイトのURLを教えて貰いました。

    確かに自分が好きなのは原始宗教と言うか、山や川を崇める事です。何か不思議!

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      こんにちは、森守様。
      最近は僕のブログでも、当記事が大人気のようです。
      オソロシドコロ で離島なら、それはもう対馬のことでしょう。
      多久頭魂神社などは比較的、訪問も容易なので、一度訪ねてみたら、何か感じるものがあるかもしれませんね。
      オソロシドコロの中核とも言える八丁郭は、誰かガイドになってもらった方が良いかもしれません。
      普通にはたどり着けない、そんな場所にあります。

      対馬はオソロシドコロ だけではなく、禁足地と呼ばれる場所も他に多数あり、原始の人の祈りの形がそのまま残されているような島です。
      そんな思いに強く惹かれ、11月、再び島を訪れる予定です。
      今回は山の上の遺跡巡りが中心となりそうですが。

      古事記・日本書紀で神話が作られる以前、僕ら日本人はこの島国の自然を愛し、畏れ、敬ってきたのだと思います。
      そのDNAが深く、心に受け継がれているのでしょうね。

      いいね

  2. 矢口林三 より:

    クレイジージャーニーという番組で、このオソロシドコロを特集していて、検索したどり着きました。
    こちらの方が詳しく記されていたので興味が湧きます。
    (こんな言い方はバチが当たるでしょうか?)

    ありがとうございました。

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      矢口様、こんにちは。
      対馬はとても不思議な島で、オソロシドコロでさえ、島の魅力の一部分に過ぎないと言えます。
      裏八丁郭をリベンジしようと思っていますが、ちょっと怖い部分もあり、今一つ踏み切れていません。
      意外に旅費が高くつくこともあります。

      八丁郭は、ちょっと他では感じることのないような、畏怖を感じました。
      しかし本当の自然とはそういうものだと思います。
      敬虔な気持ちで驕ることなく訪ねてみれば、バチが当たることもなく、
      世界は素晴らしい景色を見せてくれるみたいです。

      いいね: 1人

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