朝近稲荷 ~ 狐の嫁入り ~:白姫 24

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朝近の瞳は不思議な色を湛え、私の姿を映しだしていた。薄茶色の虹彩に、灰色がかった銀色が混じっている。きれいな、とてもきれいな瞳だ。透き通るような白い肌は滑らかで、ほんのり赤みが差している。顔に乗った小粒な鼻の下には、赤い唇がふっくらと盛り上がっていた。全てが繊細で、触れずとも驚くほど柔らかいことがわかる。
「どうだい与四郎、朝近はかわいいだろう」
朝日丸の言葉が耳に聴こえたような気がした。どれほど私は彼女の顔に見惚れていたのだろう。すると朝近は、大きな目を開けたまま、大粒の涙をこぼしはじめた。ぽろぽろ、ぽろぽろと。そして一筋の道となった涙が彼女の頬を伝って、白い羽織の上にぽたり、ぽたりと落ちる。真っ白な生地の上を転がる水玉は、どこか狐の嫁入りに降るという雨を思わせた。
朝近は瞬きもせず私を見て何かを言おうとするが、声を失くし、薄く開いた小さな口は小刻みにふるえていた。
「朝近」
白狐の頭を優しく撫でた。朝近の体温が絹のような髪を伝って、手のひらに届く。涙は止まらず、せっかく美人なのに鼻も流れている。私は朝近の顔を引き寄せ、それをそっと拭いてあげたのだった。

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福岡県久留米市諏訪野町に「諏訪神社」があります。

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ここは久留米第二の古社と言い伝えられています。

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祭神は「大巳貴命」と「建御名方命」。

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創建は不詳。奈良朝末から平安初期頃(1300年から1450年前)には既に宮立があったと云います。

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天慶年間1030年前の筑後の国神名帖には、「祭神大巳貴命建御名方命」とあり、往古には「大神社」と呼ばれていたそうです。

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神紋は「違い鎌」。
この違い鎌の神紋は、各地の諏訪神社で見られるものの、本家長野の諏訪大社で見ることはありません。
諏訪大社の神紋は「梶の葉紋」となっていて、唯一、江戸時代に記された『諏訪旧蹟志祭神』に「この神を祭るに鎌を神幣とす」と記されているのだそうです。
この鎌を神に捧げ奉る神事は現在、鉄製の鎌を神木に打ちつける「薙鎌打ち神事」の由来になっているのでしょう。

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当諏訪神社の境内には、本殿の右手に3社の稲荷社が鎮座しています。

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奥から「伏見稲荷神社」、

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一際大きめの「源九郎稲荷神社」、

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源九郎稲荷は源義経や豊臣秀長の伝承にある狐のことでしょうか、

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それと「朝知加稲荷神社」です。

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おお、朝近ちゃんタソ、こんなところにおりましたか。

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大根地山を登った際に出会った朝近稲荷、そこから閃いて、現在執筆中のヒロイン・ちゃんタソが爆誕しました。

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しかしながら、実際朝近稲荷とは何なのか、よくわかっておりません。
某新興宗教系が祭祀している、なんて話をちらりと聞きましたが、それもよくわかりません。

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ともあれ、僕の中ではヒロイン朝近ちゃんタソとしてイメージは確立してしまっているのです。

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ところで、先程の神紋の違い鎌、実は伏見稲荷大社の御神符にもひっそりと描かれているのです。

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朝近神社をGoogleマップで検索すると、福岡に2件ヒットしました。

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その一つは、嘉麻市漆生の丘陵の集落にぽつんとありました。

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最初場所が分からず、地元の方に尋ねるとそこだよと教えていただけました。

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最近建て直されたのか、比較的新しい匂いのする神社。

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たまたま社家風の方がいらっしゃったのでお伺いすると、大根地山から勧請されたもののようです。

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田川市弓削田にやってきました。

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田園の先にある立派な神社。

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これは朝近神社ではなく、貴布祢神社です。

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貴船神社系は水神を祀ることが多いですが、個人的には常世織姫が関連していると見ています。

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それでこの神社は前方後円墳のような丘に鎮座しており、

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もう一つの丘陵には

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「北辰神社」と、

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朝近神社が鎮座しているのです。

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天候のせいか、ものわびしげな朝近ちゃん。

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口からビームがでそうな龍の手水があります。

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この神社に関しては、貴布祢神社含め情報がありません。

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やはり大根地山から勧請されたものと思われるのですが。

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「その昔、朝近ちゃんタソから神託を受けて建てた神社があったんだよ」
そんな情報を突然いただきました。そう、例のあの方です。

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昔ある人に、「川のそばの大樹があり、一面銀の野になっている場所がある。そこに我を祀れ」と神託があったそうです。
そんなところないけどな~っと探していたら、宝満川のそばに銀杏の大木があり、落ちた葉で金色になっている場所があったそうです。それがここ。

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神社が建てられたそうですが、今は失われ、石碑が残されるばかりとなっています。

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その朝近神社跡の近くには、「旭地蔵尊」があります。

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太宰府天満宮の神事「鬼すべ」の鬼にされたお坊さんゆかりの地蔵だそうです。

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悲しい伝承ですが、個人的には朝近神社跡地の近くに「旭」があるのが気になります。
朝日丸姉さんとの関わりは!…ないか。。
ただ、この一帯は地名を「白川」と言い、油山の夫婦岩と大根地山を結ぶライン上にあります。

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あの方情報で朝近神社跡を探していると、少し北側に「朝近稲荷」を見つけてしまいました。

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場所は太宰府市三条になります。

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丘の上の住宅街のさらに丘にあるちゃんタソ神社。

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小ぶりな神社ですが、秘境感が楽しめます。

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おお、良いではないか。

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ただやはり、ここも情報がありません。
朝近ちゃんとはいったい誰なのでしょうか。
いつごろ、どういった神として祀られているのか。

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現存しているお社は二つ、

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石を積み上げただけのようなものです。

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本来は3社あったようで、一つは潰れていました。

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こうしてヒロインとして書かせていただいておりますので、朝近ちゃんタソ巡りをしてみましたが、情報の収穫なしです。

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何か分かる方いらっしゃいましたら、コメント欄にどしどしお寄せください。

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「朝近神社はちょくちょくあるよねー」と何人かから伺いましたが、僕が調べて見つかったのは以上でした。
いうほどちょくちょくはないなー、と思っていましたら、もう一社発見。

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福岡市博多区月隈、福岡空港にほど近い場所にありました。

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こちらも秘境感たっぷり。

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やはり丘の上に鎮座しています。

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稲荷は神仏習合の香りがしますね。

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狭い境内ですが、摂社がたくさんあります。

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参道には、地雷神・稲荷大明神・地蔵菩薩・不動明王といった面々。

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このクエスト感たっぷりの神社は「正一位朝丸稲荷大神」だそうです。
朝丸、朝日丸姉さんやないかい!

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いや、違うかもしれませんが、そうじゃないかと思われます。

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朝日丸姉さんも、大根地山に祀られていました。
創建は不詳で祭神は「宇迦之御魂大神」らしんですがね、朝丸とはいったい。

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ずらりと並んだ境内社、右から杉徳大神・藤若大神・鎮開大神・桃若大神・音次郎大神・賢徳大神。

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こちらも右から杉若大神・大杉大神・獄の森大神・朝近大神・賢学大神・朝田大神。
ちゃんタソイタ~っ!!

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陽光を浴びて、朝近ちゃんがひっそり佇んでいました。

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お稲荷さんはね、本当は白蛇なんですよ。でも朝近ちゃんは白狐っぽい女の子という設定です。

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そんな僕のちゃんタソも、ついにお嫁に行くことになりました。
コツコツ本を書いておりまして、ついにここまでやってきました。

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まあ、話としてはまだ中盤です。僕の旅はまだまだ続くよどこまでも。

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狐の嫁入りのシーンを書きながら、僕の心には天気雨が降っていました。

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「どうだい与四郎、朝近はかわいいだろう」
これが娘を嫁に出す、父親のきもちなんだろうか、とね。

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7件のコメント 追加

  1. hiroban2 より:

    稲荷さんと、白蛇さんの関係は気になってます。
    現実ではキツネさんは蛇を捕食する関係ですね。

    それと、空想の竜神、シャチホコ等々はDNAに刻まれた恐竜を表すものではと考え始めています。
    ジュラ紀の支配者&暴君=生死を司る神かも。
    竜神&シャチホコ=ティラノサウルス(陸)+モササウルス(海)+テプラノドン(空)

    いいね: 1人

    1. 五条 桐彦 より:

      hirobanさん、コメントありがとうございます♪
      稲荷の御神体は白蛇ですが、何故白狐が神使になっているのか謎ですね。御食津神≒ケツ(狐の古語)というのなら、白狐が御神体でも良さそうなものですが。

      DNA説、面白いです!

      いいね

      1. 池尾康弘 より:

        ありがとうございます。
        ご紹介いただいた「出雲王国とヤマト政権」に、インドのワニを祀る代わりにサメで代用したとの記述があり閃いたのです。
        昔の人はジュラ紀ついて知見がなかったのであのような形(竜、チャチ)になったのでしょう。
        蛇を避ける感情には本能的なものを感じます。
        絶滅した日本狼を恐れる習性を利用して、鉄道の線路に外国の狼の小便を撒いて鹿を防ぐ事例もあります。
        支配者が王権神授説を押し付けるための架空の神(天つ神)の影に眷属として竜神や蛇神を配するのもこのためでしょう。
        禅宗の寺の天井には竜が描かれていますね。

        いいね: 1人

        1. 五条 桐彦 より:

          なるほど、確かに!ジュラ紀を知らないのに竜のあの造形をイメージできたのは不思議ですね。支配者がこのDNAに刻まれた畏怖を利用していたとすると、それはそれで凄まじいなと思います。

          いいね

  2. Nekonekoneko より:

    堪慧という禅僧が神道の神事の”鬼燻べ”に巻き込まれた事件🐥どうやら堪慧は時の権力闘争の暗雲により被害を被ってしまった犠牲者らしい…鬼燻べとは、氏子300人総出でやらかす危険極まりない祭事🐤現在こそ昔ほど暴れん坊祭事ではないだろうが、当時の鬼燻べがどんな荒々しさだったのかは察して知るべき🍑堪慧さんは、最終的に即身成仏の体で横穴に籠り、最後まで念仏を唱えて入定した(息絶えた)という…ちなみに、堪慧さんは横穴に籠る前、村人らに”私が入定したら供養してくれ。そしたら何でもお願い事を叶えてあげるから。”というふざけた冗談を言い残した。無理もない。無理もない復讐乙…🦑

    いいね: 1人

    1. 五条 桐彦 より:

      詳しいご紹介、ありがとうございます😊
      僕は面倒だったので、省いてしまいました。
      ちなみに僕は、人身御供などの伝承は、今の幸福な時代の感覚で安易に批判はできない、という立場です。当時生きていくのは、今のように情報も物資も豊富ではなく、大変だったことでしょう。まさに皆、命懸けで生きていたのでしょうね。

      いいね: 1人

      1. Nekonekoneko より:

        人身御供とは…🐥一体誰が人身御供🐤即身成仏は仏教徒による一種の最終修行形態ですがな。即ちその身そのまま仏に成るという、断食、坐禅、読経、引きこもりを継続した後に入定(事実上の衰弱死)に至るという過激な行。誰ですか人身御供と解釈したのは🦑

        いいね: 1人

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