竈門神社の秋の紅葉ライトアップを見にきたついでに、夜の太宰府天満宮へ立ち寄りました。
異国語飛び交う雑多になってしまった昼の天満宮とは打って変わって、夜の天満宮は、不気味なくらいに静かです。
鬼灯のような外灯を頼りに、太鼓橋を渡ります。
冷えた空気が肺を満たし、まるで深海に降り立ったような錯覚を感じさせます。
光に浮かぶ楼門。
それは竜宮の門ではなく、千引きの岩。
その先には冥界が広がっていました。
そういえば、この日は11月20日、天神さまの御衣をお召し替えする「更衣祭」が斎行された直後でした。
祭事では季節に合わせ、境内のすべてのものがお衣替えされ、境内全体が新たな雰囲気に包まれるのだと云います。
天満大自在天神さまもご機嫌が麗しいようで、無礼な僕の奉拝も許していただけたよう。
境内には、至る所にたくさんの菊が並んでいます。
菅原道真公はことさら菊を愛でられたことから、菊愛好家「秋芳会」により、菊花展が開催されています
梅の花を好んだことで有名な道真公ですが、桜花の美しさを称え、菊花を若くから栽培するほど好み、薔薇の妖しさも愛でたと云います。
つまり花全般、好きだったんですね。
更に雪と月を加えた「雪月花」を好んだとされ、雪・月・花の美しさをたびたび擬人化して詠んだりして、今でいう萌系オタクだったようです。
菊花展はちょうど七五三参りの頃に重なることから、菊を背景に記念撮影を行う姿は、この時季の風物詩ともなっています。
また康保元年(964年)に小野好古により伝えられたという「四度の宴」の一つ「残菊の宴」も、菊の花を愛でられた道真公をお偲びし、今に受け継がれています。
ともかくも、菊の香りが濃密に漂う秋夜の太宰府天満宮、冥界の道真のご機嫌な一句が聴こえてくるようでした。
天満宮の楽しみの一つ、季節ごとに変わるおみくじ、
今回は「吉」でした。