今帰仁(なきじん)の聖蹟を訪ねてみると、季節外れの緋寒桜が僕を待っていてくれました。
ピンク色の花をうつむきがちに、物想いに、耽るように。
今帰仁村に足を向けたのは琉球七御嶽の一つ「クバの御嶽」を訪ねるためでした。
クバの御嶽は山全体が聖域で、沖縄最大の御嶽になります。
入口からして鬱蒼としたこの聖域は、どこまでも深く、熱帯の樹林が生い茂っています。
琉球七御嶽とは、開闢の神アマミキヨによって造られた7つの聖地のこと。
辛うじて道と呼べる道を歩いていきます。
ひと気のない森は歩いていて、とても怖い。
ふと一瞬空が開けて、ほっと胸をなでおろします。
分かってはいるのですが、本来、御嶽は男性禁制なのです。
その禁が今も守られている御嶽も多い中、当地は一般人も来ているようなので訪ねてみたのですが、やはりおいそれと踏み込んでいい場所ではないようです。
古来、王族の男性が足を踏み入れる際は、衣服を裏表に着用したという話を聞いたので、形だけでも真似してみました。
が、そんなことで許しを得られるわけでもなし。
再び道が開けてくると、
なにやら見えてきました。
10分ほど密林を歩いてたどり着いたここは、拝所にあたる場所のよう。
あまりの畏れ多さに、膝が地に着きます。
ここから険しい山道を登った先に、本来の御嶽があるようですが、これ以上先には進む気になれません。
ここまで伺わせていただいた非礼と感謝の意を述べて、後にしました。
クバの御嶽は「今帰仁城跡」のそばにあるので、城跡も訪ねてみます。
首里城に匹敵する敷地面積を誇るという今帰仁城跡。
蛇のようにくねくねと曲がった城壁は、防御機能に優れ、難攻不落の名城として知られていました。
全長1.5kmにわたる城壁の石には、太古の化石も見られます。
城壁の脇に「古宇利殿内」(フイドゥンチ)という祠があります。
三基の香炉に三つの霊石が並び「火ぬ神」が祀られていると云います。
祠は今帰仁村の離島である古宇利島に向き、古宇利島出身の人々が旧暦の8月に集まって、遥拝する場所なのだそうです。
古宇利島には、神により地上に下ろされた男女が、ジュゴンの交尾を見て男女の違いを知る、琉球のアダムとイブ神話が残されています。
正門にやってきました。
今帰仁城の正門は「平郎門」(へいろうもん)と呼ばれます。
平郎門の名称は『琉球国由来記』に、「北山王者、本門、平郎門ヲ守護ス」として登場します。
沖縄では1月に満開を迎える寒緋桜ですが、2月末の僕の来訪を待っていてくれたかのように、その美しい桜色の花を咲かせていました。
満開の頃は、この先の「七五三の階段」脇に花を咲かせ、美しい花のトンネルを作り出すのだそうです。
この階段は戦後、米軍の車両が城内へ登ることから、戦災文化財の修理と保護のため、造られたものです。
本来の道はこの横にあるそうです。
今帰仁城跡は国指定の史跡であり、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」のひとつ。
琉球王国が成立する14世紀以前から存在していた北山(ほくざん)国「北山王」の居城であり、「北山城」とも呼ばれます。
沖縄は、琉球王国誕生の前は、北山(ほくざん)、中山(ちゅうざん)、南山(なんざん)の3つの国と王に分かれていました。
その中でも北山城主の「攀安知」(はんあんち)王は、本島北部によく見られる荒々しい岩山のような性格だったと云われています。
北山王は、カリスマ性も持ち合わせ、『中山世鑑』(ちゅうざんせいかん) 」によれば、北山城が数千の軍勢に囲まれた時、
「我々は少勢になったが、ただ攻められっぱなしでは北山武士の名が廃る。後世に笑われないよう今こそ立ち上がろうではないか」
と部下たちを鼓舞し、わずか17騎で立ち向かったと云います。
圧倒的武力で攻めつつも、なかなか北山を攻め落とせなかった中山軍は、北山王の側近を賄賂で寝返らせる作戦に出ます。
ついに臣下で武勇のあった「本部平原」(もとぶていばら)に寝返りされた攀安知は、もはやこれまでと、今帰仁城にて自害し果てたのです。
主郭に登ると、「今帰仁里主所火の神」(なきじんさとぬしどころひのかみ)という祠がありました。
建築年は不明ですが、今帰仁城監守が首里へ引き揚げた1665年頃に設置されたと考えられているようです。
旧暦8月10日には今帰仁ノロ以下の神人(かみんちゅ)が城ウイミの祭祀を現在も行っており、また、今帰仁上りの重要な拝所として参詣者が絶えないといいます。
また帰り際、「ソイツギ」(城内下之御嶽)という聖地がありました。
「ソイツギノイシズ御(お)イベ」という名の神が祀られているそうですが、
ガイドの方の話に聞き耳を立てていると、ここには大和の神が祀られているのだとおっしゃっておられました。
Fantastici luoghi .Gli dei li proteggano sempre.
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Grazie, hai ragione!
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城好きには堪らない城壁ですね!
ソイツグノイシズ御イベ神が祀られている…
ガイドさんは、大和の神が祀られている!
とは??
無知な私に解説の程よろしくお願いします。
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沖縄の城壁はどれも素晴らしく、その美的センスと造り上げる努力に脱帽します。
ガイドさんは別のグループの方で、僕が写真を撮っている後ろで、そのように話されていました。
女性の神様だっておっしゃってたような気がするので、天照大神のことですかね。
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