比叡山のふもとにあり、全国三千八百社ある山王社の総本宮「日吉大社」に訪れました。
その象徴的な鳥居は「山王鳥居」と言われ、神仏習合の象徴的な鳥居となっています。
比叡山に生息していた猿は「真の猿」=「まさる」と呼ばれていましたが、やがて「真」を「神」に置き換えて「神猿」(まさる)さんと呼ぶようになりました。
「魔が去る」「何ものにも勝る」と、とても縁起が良いらしいです。
日吉大社は「東本宮」と「西本宮」に分かれていて、「東本宮」は「大山作神」(おおやまくいのかみ)、「西本宮」は「大己貴神」(おおなむちのかみ)を祀っています。
かつて「織田信長」に焼かれ、「豊臣秀吉」によって再興された神社でもあります。
東本宮に向かう道には「猿岩」が鎮座していました。
どことなく「まさる」さんを彷彿とさせます。
東本宮の大山咋神は「山王」と呼ばれるほどの威厳ある山の神。
中央拝殿の左手にあるのは「樹下宮」(じゅげのみや)です。
この御祭神は大山咋神の妃「鴨玉依姫神」(かもたまよりひめのかみ)になります。
本殿に向かう道に「亀井霊水」があります。
伝教大師が参拝した時に霊亀が現れたので、神聖な井戸としたと伝わります。
東本宮本殿。
御祭神「大山咋神」の「和霊」を祀っています。
続いて「西本宮」へ。
西本宮の楼門をよく見ると、まさるさんが屋根を支えています。
微笑ましい。
「西本宮」の御祭神は「大己貴神」(おおなむちのかみ)。
出雲大社の大国主神と同じ神であり、奈良の「大神神社」から勧請さたと云います。
本殿もどっしりとしておおらかな感じです。
楼門から外に出ると「祇園石」という霊石があります。
古来より祇園の神「牛頭天王」が宿るといいます。
西本宮と東本宮の間にあるのが「宇佐宮」と「白山宮」。
「宇佐宮」は宗像三女神の一柱「田心姫命」を祀っています。
田心姫命は大己貴神(7代出雲大名持・天之冬衣王)の妃神でもあります。
「白山宮」「白山姫神社」は「菊理姫神」(くくりひめのかみ)を祀っています。
菊理姫は死んだイザナミを追ってイザナギが冥界を訪れた時、間を取り持った神様ですが、謎の多い神です。
穏やかな空気が流れていました。
そしてここ日吉大社にも奥宮なるものが存在するといいます。
二つの遥拝所の間にある大きな石段。
そこから30分の山道の先、八王子山の山頂付近に奥宮があるそうです。
これは登るしかありません。
30分ほどの山道とはいえ、その急斜面には思わず閉口してしまいました。
45度はあるんじゃないかと思えるその坂を、一歩を踏み出すごとに体力と精神力を消耗させながら登ります。
足が悲鳴をあげる頃、目的の宮が見えてきました。
よくこんな場所に、と突っ込んでしまうほどの傾斜に、清水寺ばりに建てられた二つの宮があります。
左手前が「三宮宮」、右奥が「牛尾宮」。
「三宮宮」は「鴨玉依姫神の荒霊」、「牛尾宮」は「大山咋神の荒霊」を祀っています。
そして両宮の間奥にある巨大な石が「金大巌」(こがねのおおいわ)。
高さ10mの大岩は日吉大社信仰の始まりの場所であり、磐座です。
山王にふさわしい、強烈な存在感を示しています。
この激しい山道を2基の神輿を担いで登り、数日放置して神を宿らせまた下るという、恐ろしくも勇壮なお祭りもあるそうです。
なんとも山王神にふさわしき、神社でした。